慰謝料相場

交通事故によって怪我を負った場合、加害者側から慰謝料の支払いを受けることができます。慰謝料とは、交通事故によって被害者が受けた精神的な苦痛に対して支払われる賠償であり、治療費などとは別に被害者が受け取ることのできる損害賠償の一つです。そこで、交通事故に遭った場合に受け取ることのできる慰謝料相場について解説します。
交通事故で受け取れる3種類の慰謝料
交通事故に関して被害者又は遺族が受け取れる慰謝料には次の3種類があります。
入・通院慰謝料
入・通院慰謝料とは、交通事故によって怪我を負ったことに対する慰謝料です。入・通院慰謝料は、入院や通院の期間や怪我の状態によって金額が算定されます。
後遺障害慰謝料
交通事故によって怪我を負った後、後遺障害として症状が残ることがあります。後遺障害が残った場合に、怪我を負ったことについての慰謝料である入・通院慰謝料とは別に被害者が受け取ることができるのが後遺障害慰謝料です。後遺障害慰謝料を請求するためには、後遺障害の程度などに応じた後遺障害等級認定を受ける必要があります。
死亡慰謝料
死亡慰謝料とは、交通事故によって被害者が死亡した場合に死亡した本人と遺族が受け取る権利を持つ慰謝料です。死亡した本人が受け取るべき分は、遺族が相続することになります。怪我をしてしばらく入院した後に被害者が死亡した場合には、入・通院慰謝料に加えて死亡慰謝料が支払われます。死亡慰謝料を請求できるのは、被害者の両親、配偶者、子どもです。

交通事故の慰謝料相場に影響する要因
交通事故での慰謝料は、多くの要因によって左右されます。以下に主な要因を示します。
事故の重傷度
交通事故でのケガの程度が慰謝料に影響を与えます。重傷を負った場合は、慰謝料が高額になる傾向があります。重傷とは、骨折や脊髄損傷、内臓損傷、重度の打撲傷などのことを指します。また、重傷度は治療期間や後遺障害の程度にも影響を与えます。
治療期間
治療期間が長いほど、入・通院慰謝料が増額される傾向があります。長期間の入院や通院には、医療費や交通費、生活費などの負担が伴います。そのため、長期間の治療によって被害者が受けた損害を補填するためにも、慰謝料が増額される傾向があるとされています。また、後遺障害慰謝料も治療期間によって変動します。治療期間が長いほど、後遺障害が残る可能性が高くなるため、後遺障害慰謝料が増額される傾向があります。
年齢・性別
年齢や性別によって、慰謝料の相場が変動します。例えば、高齢者や女性は、同じ程度のケガでも慰謝料が高額になる傾向があります。高齢者は、治療期間が長くなる傾向にあることや、身体の回復力が低下することから、治療期間中に生活の質が低下する可能性が高くなります。また、女性は、同じ程度のケガでも男性と比べて体力が低下しやすいことや、仕事や家事などの負担が大きいことから、治療期間中に生活の質が低下する可能性が高くなります。
職業
職業によって、慰謝料の相場が変動します。例えば、身体労働者や運転手など、仕事に支障をきたす職業の場合は、慰謝料が高額になる傾向があります。これは、職業によって治療期間中に受ける損害が大きく異なるためです。身体労働者は、身体的な負担が大きいため、治療期間中に仕事ができなくなる可能性が高く、慰謝料が増額される傾向があります。また、運転手は、車の運転が仕事であるため、交通事故によって運転ができなくなる可能性が高く、慰謝料が増額される傾向があります。
慰謝料請求に関する手続き
慰謝料請求に関する手続きを適切に行うことで、慰謝料の相場に影響を与えることができます。弁護士に相談し、適切な手続きを行いましょう。慰謝料請求においては、相手方の保険会社と交渉する必要があります。交渉の際には、被害者自身が交渉するよりも、弁護士を通じて交渉する方が有利だとされています。また、慰謝料請求には時効があるため、請求する時期も重要です。適切な時期に慰謝料請求を行うためにも、弁護士のアドバイスを仰ぎましょう。
交通事故の慰謝料の相場
交通事故による慰謝料の算定方法としては、次の3種類の基準があります。この算定基準が交通事故の慰謝料の相場を形成しています。
自賠責保険基準
自賠責保険とは、自動車を所有する場合には必ず加入しなければならない保険です。自賠責保険における損害賠償額の基準が自賠責基準です。自賠責基準は、他の2つの基準と比較してもっとも賠償額が少なくなります。
任意保険基準
任意保険基準とは、加害者が加入している任意保険各社の支払い基準です。被害者本人が加害者の保険会社と損害賠償について示談交渉するときに保険会社が提示してくる金額は任意保険基準に基づくものです。次に説明する弁護士会基準よりも低額に抑えられていることが一般的です。
任意保険基準に関しては、以前は統一の基準がありましが、現在では保険の自由化により保険会社ごとに定めた独自基準があります。保険会社ごとの基準は公表されていません。
弁護士会基準
弁護士会基準とは、弁護士会が交通事故に関する過去の裁判例をもとにして妥当な損害賠償額を算定したものです。
つまり、弁護士会基準は、被害者が加害者に対して交通事故による損賠賠償を求める裁判を起こした場合に、最終的に認められる可能性が高い損害賠償額を定めたものであり、自賠責保険基準や任意保険基準よりも賠償額が高くなっています。弁護士に対応を依頼した場合には、弁護士会基準をベースに示談交渉が進められます。
交通事故による慰謝料の算定例
交通事故でもっともよく発症するむち打ち症のうち他覚症状がないケースについて、自賠責保険基準と弁護士会基準で慰謝料を計算した例が次の表です。任意保険基準は公表されていないのでこの表には含まれていません。
通院期間 | 実通院日数 | 後遺障害等級 | 入通院慰謝料 | 後遺障害慰謝料 | 慰謝料総額 | |||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
自賠責保険基準 | 弁護士会基準 | 自賠責保険基準 | 弁護士会基準 | 自賠責保険基準 | 弁護士会基準 | |||
60日 (2か月) | 30日 | 非該当 | 25万2千円 | 36万円 | 0円 | 0円 | 25万2千円 | 36万円 |
180日 (6か月) | 60日 | 12級13号 | 50万4千円 | 89万円 | 150万円 | 290万円 | 200万4千円 | 379万円 |
14級9号 | 50万4千円 | 89万円 | 45万円 | 110万円 | 95万4千円 | 199万円 |
表に記載のとおり、他覚症状のないむち打ち症の場合には後遺障害等級は非該当となることもあります。等級認定がされる場合には、12級13号か14級9号となります。このうち、12級13号の方が症状としては重いものです。
この表を見ると、自賠責保険基準と弁護士会基準とで、最終的に被害者が受け取ることのできる慰謝料総額には大幅な開きがあることがわかります。

弁護士会基準での示談は弁護士に依頼を
弁護士会基準で示談を成立させるためには弁護士に依頼することが得策です。多くの保険会社は被害者本人が示談交渉をしても任意保険基準での提案しかしてこないためです。弁護士に依頼すれば、保険会社は裁判を起こされる可能性があると考えるため弁護士会基準での示談に応じてもらえる可能性が高まります。